つわりになりやすい人の
特徴をチェック

妊娠中の悩み事の代表といえば「つわり」。
始まらなければ不安になり、症状が起こると早く終わってほしいと憂うつになってしまう人も多いのではないでしょうか。つわりは、いつ頃始まって、いつ終わるものなのか、どう対策すればいいのかなど詳しくお伝えします。
香川医科大学卒業。大阪警察病院、大阪府立母子保健総合医療センター等を経て、大阪大学医学部博士課程修了。現在は泉州広域母子医療センター長、りんくう総合医療センター産婦人科部長。産科医にしてジャズピアニストでもあり、産婦人科を舞台とした漫画『コウノドリ』(講談社)の主人公のモデルにもなった医師。
つわりとは、妊娠によって起こるさまざまな不調のことを言います。食欲不振、吐き気、嘔吐など消化器系の異常が、主な症状として知られており、妊娠してもまったく症状が出ない人もいれば、「妊娠悪阻(にんしんおそ)」といってつわりが重症化した状態になる人もいます。「妊娠悪阻」になると食事や水分がまったくとれず、脱水症状や急激な体重の減少、頭痛やめまいなどの症状を引き起こし、病院での治療が必要となります。
つわりの原因は、はっきりとはわかっていませんが、妊娠によって体内で起こる急激な変化、特に着床によって大量に分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが関係していると考えられています。体質や遺伝に関連しているともいわれ、母親や姉妹のつわりが重かった人、ホルモンバランスや体調の変化に敏感な人、乗物に酔いやすい人などは症状が重くなりやすい傾向があります。
つわりが始まる時期は一般的には、妊娠5週頃からです。妊娠の週数は、最終月経開始日を0週0日として数えるので、生理予定日が来ても生理が始まらず、一週間ほど経った頃です。ただ個人差があり、人によっては妊娠4週頃や、生理予定日よりも前につわりの症状が出る人もいれば、いつまで経っても始まらない人もいます。「何となく食欲がない」ぐらいで始まって徐々に症状が出る人や、急にはっきりとした症状が出る人など、始まり方もさまざまです。なお、つわりの症状で妊娠が判明する頃、お腹では赤ちゃんの脳やせき髄、目や口の原型、心臓や消化器官など体の大事な器官が形成され始めています。妊娠のサインがあったら、早めに産婦人科を受診しましょう。
つわりのピークは妊娠8~11週頃といわれ、この頃に最も強い症状を訴える人が多いようです。そして、つわりは、妊娠12週を過ぎると徐々に治まっていき、妊娠16週頃までに終わることが大半とされています。ただこちらも個人差があり、人によっては妊娠16週以降も続いたり、出産直前まで症状が治まらないこともあります。さらにいったんは落ち着いても、妊娠後期になると大きくなった子宮に胃腸が圧迫されて、吐き気などの症状がまた表れることも。終わり方もさまざまで、次第に症状が落ち着いていく人もいれば、ある日、気が付いたら急に症状がなくなっていたという場合もあります。
つわりの症状といえば、食べると吐いてしまう「吐きづわり」が思い浮かぶ人が多いと思いますが、それ以外にも、逆に食べないと気持ちが悪くなる「食べづわり」、眠気やだるさがひどくなる「眠りづわり」、よだれがたくさん出る「よだれづわり」などさまざまな種類があります。
つわりのタイプに合わせてさまざまな対処法がありますが、気分が悪くて食事がとりにくいときは、とにかく食べられるものを優先し、水分補給がきちんとできていればOK。ただ葉酸は胎児の発達に大切な成分なので、食事でとりにくければサプリなどで上手に摂取を。また食べづわりなら、カロリーオーバーにならないよう食事を小分けにしたり、低カロリーの食材を選ぶなど工夫しましょう。
先輩ママたちへのアンケートでは、つわりの症状があった人は76%。食べづわり、吐きづわりを経験した人が一番多かったようです。どんな対策で乗り切ったのか、リアルな声をご覧ください。
プレママの「つわりの乗り切り方」に
ついてリアルな声をお届けします♪
つわりで思うように食事がとれないと、赤ちゃんへの影響が気になってしまいますね。でも妊娠初期の赤ちゃんにはそれほど栄養は必要なく、胎児の発達にはほとんど影響がありません。先ほども述べた通り、食べられるものと葉酸、水分さえとっていれば大丈夫。ただし、1日中頻繁に吐く、食事や水分がまったくとれない、ふらつく、頭痛やめまいがするなどの症状がある場合は重症化している恐れがあるので、すぐに病院を受診しましょう。 また仕事をしていると、つわりなどで妊娠前と同じようには働けないことがあります。そんなときは体調に応じて時短勤務や時差通勤などの措置を受けられるので、主治医に「母健連絡カード※」を書いてもらい、会社に相談しましょう。
※妊娠中または出産後の女性労働者が、医師や助産師から受けた指導事項の内容を、会社に的確に伝えるためのカード。
ストレスがあるとつわりは悪化しがちなので、好きな音楽を聴いたり、友だちと話したり、軽い運動などで気分転換するのがおすすめです。ただし運動をする場合は、妊娠に影響がないか医師に相談してからにしましょう。また体がつらいときはパートナーや家族に相談し、家事の分担を変更したり、食事はお惣菜ですませるなどの方法もおすすめです。無理をしないようにしましょう。
アンケートでは、つわりで家事ができなかった経験を持つ先輩ママが大半でした。対処法としては、夫に手伝ってもらった、割り切って何もしなかった、という人が上位を占めました。
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※以下、回答内容は荻田医師監修
水分の多い野菜や果物は食べやすく、脱水症状の予防にもなります。また柑橘系は口がさっぱりし、アイスクリームやゼリーなどの冷たいものも吐き気が起きにくいので食べやすいでしょう。消化しやすく胃腸に負担をかけにくい、豆腐やうどん、おかゆ、白身魚などもおすすめです。
つわりを経験する妊婦さんは50~80%といわれているので、まったくないからといって不安になる必要はありません。つわりがあるかないかで流産の可能性が高くなったりもしないので、妊婦健診で異常がなければ心配しなくても大丈夫です。
日常生活を送ることもままならない症状のときは、病院で妊娠中でも飲める吐き気止めを処方してもらったり、つわりに効果が期待される点滴をしてもらえることもあります。ただし市販薬の吐き気止めや酔い止めを服用することはできないので、必ず医師に相談しましょう。
就寝から起床までは空腹の時間が続き、血糖値も下がるため、朝は気分が悪くなりやすい傾向にあります。何か食べると治まることもあるので、起きぬけに吐き気がする場合は枕元にすぐ食べられるクラッカーや飴などを用意しておきましょう。また軽度の脱水症状が吐き気を引き起こすこともあるので、起きてすぐ水分をとるのもおすすめです。
つわりで体調が悪い妊婦さんはちょっとした家事もつらく感じるので、積極的に家事を担当しましょう。できれば何をしてほしいか直接聞き、その家事を代わってあげるとベスト。またパートナーが早く帰宅するだけでも、妊婦さんは安心して心身ともに楽になることも。マタニティブルーでつらい気持ちを聞いてあげることも助けになります。