試作品を前にしたWMさんは、まず現在の出産・育児事情から話しはじめた。出産後しばらくはしゃがむ動作がツラいと感じるママが多いこと、出産年齢の上昇などのさまざまな事情で親の支援を受けにくい家庭が増えていること。
さらにシャワー浴は、石鹸の洗い残しを防いで皮膚トラブルになりにくく、赤ちゃんの疲労感も軽減でき、介助者の腰痛緩和などの医学的メリットも多いことを説明。
白井さんは座談会で聞いた「大変さ」「面倒さ」の背景を理解するとともに、シャワー浴の価値を改めて実感した。「なぜその機能が必要なのか、不要なのかを考えるには、ママやパパを取り巻く状況と、具体的なメリットを知ってもらう必要がありました」と岸畑さん。
(写真上)首がすわっていない新生児でも、耳に水が入りにくく頭部が安定しやすい仕様を追求。
(写真下)水はけの効率を考慮してネットも試作したが、お尻が下がって床につく可能性を考慮して不採用に。
ここから具体的な機能面のチェックへ。1人で洗うときの負担をできるだけ減らす、お風呂以外でも使える可能性などのヒントをもらった白井さんは次の試作へ。
2度目の確認では、頭を置くくぼみで首がグラつかないか、横側から耳に水が入らないか、汚れた水が速やかにはけるかなど、詳細なチェックを受けてさらに改良を重ねた。特にこだわったのは、新生児が使用することへの衛生面。
洗った水がたまりにくく排水性を高めるよう行き着いたのはこの水抜き用の3つの穴。
「水はけ部分は特に試作を重ねました。穴の数が多いと弛みでお尻が床につきやすい、穴が少ないと汚れた水がたまってしっかり排水できないというように、いずれも衛生面に影響が出ます。そもそも沐浴はおへその傷が癒えない期間に感染を防ぐためのケア。衛生面への配慮が必須のため、生地の一部をネットに変えるなど試行錯誤を重ね、弾力性と水抜き機能の両立を図りました」と振り返る。
洗面台やシンクで立って洗えるようにとサイズ調整を何度も行い、使った後にサッと乾かせるように吊り下げフックを採用。お風呂の後に脱衣所で使える、さらにはリビングでのおむつ替えにも使えるという、お風呂外での使用にもとことんこだわった。