健やかな成長を願う子どもの節句。女の子は桃の節句にひな人形を、男の子は端午の節句に五月人形を飾り、家族でお祝いすることが習わしとなっている。 この節句人形の開発にアカチャンホンポも携わり、近年では新たな人形のスタイルを続々と生み出している。伝統を守りながらチャレンジを続けているバイヤーの峯川さんに人形づくりへの想いをたずねた。
アカチャンホンポの商品
2023.12.1
子どもの成長をともに祝う
人形に込めた変化と継承。
ひな人形・五月人形
堅苦しいものではなく、
飾り方も自由に。
イメージを変えた人形の世界。
「お店勤務のときは、繊細で扱い方が難しいことから節句人形を敬遠していました」。堅苦しいもの、扱いにくいものという印象を抱いていた峯川さんが、節句人形のバイヤーに就いたのは約5年前。 詳しく知ろう、向き合ってみようと節句の歴史を調べてみると、ひな人形は平安時代に貴族の女の子たちの間で「雛遊び(ひいなあそび)」が流行したことが起源となっていることを知る。人形遊びがルーツ、という発見が峯川さんの気持ちを動かした。
思い込んでいたような堅苦しいものではないこと。歴史がある一方で飾り方には特別な決まりがないこと。調べていくうちに抵抗感がほどけていき、いつしか節句人形の世界にのめり込んでいた。 「もっと気軽に親しめる人形をつくりたい、いままでの慣習にとらわれずに新しいチャレンジをしてみたい、次第にそう思うようになっていました」。
バイヤーとして経験を重ねるにつれて、ひな人形にさらに“かわいらしさ”を追求していく。背景に使う花や屏風、衣裳や装飾などのディティールに目を向けてアイデアをめぐらせた。
ヒントにしたのはトレンド。成人式の髪飾りやシンプルで落ち着きのあるインテリアも参考にした。さらには、「おひな様とおだいり様が真正面を向いているのが従来の配置でしたが、ほんの少し向かい合わせることで結婚式を迎える仲睦まじい2人を表現した」というものも。
近づいて見ると、おひな様とおだいり様にかすかな微笑みを感じられる。造花や水引等をあしらった背景やシックな行灯、扇には衣裳に合わせた白い花をあしらい、こだわりを込めた。
人形に親しんでもらいたい
という想いをかたちに。
子どもの頃に人形遊びをしていた気持ちで、気軽に親しんでほしい。その想いは商品だけでなくサービスにも向けられる。アカチャンホンポで実施しているプレミアム補償※1に、ひな人形・五月人形を対象にしたいと社内に働きかけたのだ。 「当初は反対もあって思うように進まなかったのですが、これは人形に親しんでもらうために絶対に必要なサービスだと粘り続けました」。
峯川さんの熱意は徐々に社内の意識を変え、2020年からプレミアム補償対象に加わることに。一つひとつの人形に込めた作り手の想い、子どもの誕生を祝って用意する親や祖父母の想い、毎年その人形を飾って喜ぶ子どもたちの想い、このすべてをつなげていくことがアカチャンホンポの使命であり、それが人形文化になるのだという想いがプレミアム補償というかたちで実ったのだ。
五月人形にもインテリアになじむ落ち着いたカラーや装飾を取り入れて新しい風を吹かせてきた峯川さん。ときにこの挑戦が長い歴史をもつ人形メーカーに受け入れられないこともあったと言う。 それでも対話を重ね、ときには自分でサンプルを作り、少しずつ理解と信頼を得て新しい人形のスタイルを築きあげてきた。いまのお客さまが求めているものを。長く大切にしてもらえるものを。この信念が今までにない人形を生み続けていく原動力となっている。
伝統を重んじた人形も
大切に受け継ぎ、
あらゆる要望に応える.
峯川さんが人形づくりにおいて大切にしていることがもうひとつある。それは伝統。ひな人形・五月人形ともに新しいスタイルを追求するだけでなく、長年にわたって継承されてきた姿、装飾、仕様などの伝統を守った人形にも力を注いでいる。
「高級感を感じさせる立派で大きな収納飾りや、黒に金を合わせた昔ながらの意匠の人形もお客さまに支持されています。さまざまな価値観や嗜好性、住まいにも合う“自分の人形”に出会っていただけるよう努めています」。 一年に一度、人形を飾ることで子どもの成長を喜び、願う家族の時間。身近な存在として愛される人形をめざし、峯川さんは伝統と革新の両軸で世の中の変化を見つめ続けている。
#08
People in the story
峯川さん
Products
ひな人形・五月人形