妊娠すると、普段なにげなく食べていたものが
おなかの赤ちゃんにいいものかどうか気になってきますね。
どんな食事をすれば赤ちゃんがすくすく育つのか、
逆に食べたり飲んだりするのに注意した方がいいものは
あるのか、妊婦さんのギモンにお答えします。
監修:管理栄養士 野口知恵 先生
赤ちゃんの体はママがとる栄養から作られるので、妊娠中は普段以上に食事の栄養バランスに気をつけたいもの。でもバランスのいい食事って、どんなものを食べればいいの?という人は、まず「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」を組み合わせてとることを意識しましょう。
何をどのくらい食べればいいかは、厚生労働省から出されている「妊娠中の食事バランスガイド」を参考にしてみてください。あまり厳密に考えると続けるのが難しくなりますが、普段の食事を見直す参考になればいいですね。
※料理例
炭水化物の供給源であるごはんやパン、麺類。
ビタミン、ミネラル、食物繊維を補給するのに役立つ、野菜、イモ類、豆類(大豆を除く)、きのこ、海藻などを中心にしたおかず。
たんぱく質の供給源である
肉、魚、卵、大豆製品を主にした料理。
カルシウムの供給源となる
牛乳と、ヨーグルト、チーズなど。
ビタミンCやカリウムがとれる
リンゴ、みかんなどの果実のほか、野菜に分類される
すいか、いちごも含みます。
妊娠中は赤ちゃんの体を作るためや、ママの体のために、普段よりもたくさん必要になる栄養素がいろいろあります。以下のようなものを積極的にとりましょう。
赤ちゃんの成長のために
欠かせない栄養素
細胞の生産や再生を助け、体の発育に役立つ栄養素。細胞の分裂や成熟にも大きく関わるため、特に胎児にとっては重要な成分です。妊娠前から十分にとることで、おなかの赤ちゃんの脳や脊髄の発達異常である「神経管閉鎖障害」のリスクを減らすことができるとされています。
葉酸が多く含まれる食べ物
ほうれん草、モロヘイヤ、アスパラガス、
ブロッコリーなど緑色の野菜、枝豆、いちごなど
妊娠中はなんと妊娠前の
3倍以上も必要!
妊娠中は妊娠前の約3.1倍必要に。血液の材料となり、不足すると貧血気味になります。妊娠中はママから赤ちゃんに血液を通して栄養が送られるため、積極的に補いましょう。吸収を助けるビタミンCやたんぱく質も一緒に摂るように心がけて。
鉄分が多く含まれる食べ物
牛肉やアサリ、納豆、
小松菜、ナッツ類、海藻類など
不足するとママの骨の
健康が心配
赤ちゃんの骨格作りに不可欠。日本人女性全体に不足しがちな栄養素です。摂取量が足らないと、赤ちゃんに必要なカルシウムがママの骨から取られることになってしまいます。
カルシウムが多く含まれる食べ物
乳製品や小魚類、大豆製品、
緑黄色野菜、海藻類など
エネルギーの代謝に
欠かせない栄養素
炭水化物や脂質、たんぱく質といった栄養素を摂取しても、ビタミンB群が不足していると代謝がうまく行きません。水溶性ビタミンなので、とりすぎても過剰症にはなりません。
ビタミンB群が多く含まれる食べ物
鉄分といっしょにとれば
吸収力UP
鉄分の吸収を助けます。特に野菜類の鉄分はそのままでは吸収されず、ビタミンCの助けを借りて体に取り込まれます。また細胞と細胞の間を結ぶコラーゲンを作るためにも不可欠で、皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。
ビタミンCが多く含まれる食べ物
柑橘類をはじめとする果物や
野菜、イモ類など
カルシウムの吸収を
助けてくれる栄養素
カルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助けます。
ビタミンDが多く含まれる食べ物
サケやサンマ、イワシなどの魚や
きのこ類など
成人女性に不足しがち!
細胞分裂に必要な栄養素
体内の多数の酵素に含まれ、細胞の成長や分化に関わるミネラル。多くの成人女性が十分にとれていないといわれる栄養素です。細胞分裂を助け、赤血球作りにも欠かせません。
亜鉛が多く含まれる食べ物
赤身の肉、鶏肉、カニ、
豆類、ナッツ類など
赤ちゃんの体のもととなるもの
赤ちゃんの体を構成する主成分になり、筋肉や血液などを作る大切な栄養素。
たんぱく質が多く含まれる食べ物
肉、魚、卵、大豆、乳製品など
妊娠中になりがちな
便秘の予防に
妊娠すると腸の働きが低下したり、食事が偏ることで便秘になりがち。腸の中の老廃物を体外に排出する働きがある食物繊維は、妊娠中の便秘予防に役立ちます。
食物繊維が多く含まれる食べ物
海藻類やイモ類、豆類、野菜類など
妊娠中にとりすぎるとママの健康や赤ちゃんの発達に悪影響が出る成分もあります。以下のようなものには注意しましょう。
必要な栄養素だけど、
妊娠中の過剰摂取はNG!
ビタミンAは目や皮膚、粘膜の健康維持に欠かせない栄養素ですが、妊娠初期に過剰に摂取するとおなかの赤ちゃんに器官形成異常が起こる可能性が高くなってしまいます。特に多く含まれるのはうなぎやレバー。うなぎは蒲焼きを週1回まで、レバーは串焼きを週に1本までを目安にしましょう。
昆布好きな人は要注意。
うがい薬にも気をつけて
不足しても過剰摂取してもおなかの赤ちゃんに影響があるといわれます。特に昆布に多く含まれ、日本人は過剰摂取の傾向が。とりすぎないためには、塩昆布や酢昆布などを毎日のおやつにしない、昆布の佃煮やお吸物を毎日のように食べない、気になる方はだしは昆布でなくかつおだしなどにするなどの対策がおすすめ。またヨウ素系のうがい薬は使わないようにしましょう。
実はひじきに含まれる成分。
大量に食べなければ大丈夫
健康被害を及ぼす成分。ひじきに含まれており、大量に食べ過ぎないよう注意が必要です。小鉢に1杯程度を週2回まで、を目安にしましょう。
魚は体にいいものだけど、
種類によっては水銀量に注意を
魚の中には、食物連鎖の過程で水銀を体内に蓄積してしまっているものがあり、食べる量によっては赤ちゃんの発育に影響を与える可能性があります。キダイ、マカジキ、ミナミマグロ、キンメダイ、メカジキ、メバチマグロなどは水銀量に注意が必要。食べる量は1週間あたり切身半分から1切れを目安にしましょう。
外食やインスタント食品に気をつけて
妊娠中の塩分のとりすぎは、むくみや高血圧の原因に。調味料を控えめにし、インスタント食品やお惣菜、外食での塩辛い食事などを避けることでとりすぎに気をつけましょう。
他にも、妊娠中には避けたい、以下のようなものがあります。
妊娠がわかったら即、ストップ!
喫煙するとおなかの赤ちゃんに栄養や酸素が十分に届かなくなり、流産、死産、先天性異常などのリスクが考えられます。飲酒は赤ちゃんの脳の発育を阻害する「胎児性アルコール症候群」のリスクを高めます。
とりすぎるとママにも
赤ちゃんにも悪影響が
妊娠中はコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインをとりすぎると鉄分の吸収が悪くなり、貧血になりやすくなります。カフェインの胎児への影響はまだはっきりわかっていませんが、過剰摂取は胎盤への影響や、出産時の低体重などのリスクがあるといわれています。
免疫力が低くなる
妊娠中は食べないで
生魚・生肉・生卵といった「生もの」には寄生虫や菌が付着していることがあり、感染すると赤ちゃんに影響が出たり、食中毒にかかったりする恐れがあります。生ハム、スモークサーモン、ナチュラルチーズ、肉や魚のパテなども含め、妊娠中は生ものを避けてよく加熱されたものを食べましょう。
妊娠の時期によっても、必要な栄養の量や食べ方のポイントは変わります。初期・中期・後期、それぞれのママの体調やおなかの赤ちゃんの成長過程に合わせた食事のコツをご紹介しましょう。
つわりがつらい時期。吐き気がひどい人は栄養をあまり気にしすぎず、食べられるものを優先しましょう。食事があまりとれなくても、赤ちゃんはママの体に蓄えられた栄養で育つので神経質にならなくても大丈夫。ただし水分はしっかりとりましょう。いつも何か食べていないと気持ちが悪い「食べづわり」の人は、食事を小分けにし、摂取カロリーをコントロールして。また妊娠初期は特に葉酸を積極的にとりましょう。緑色の野菜には葉酸がたっぷり含まれます。
胎盤が完成し、赤ちゃんの発達がママのとった栄養により左右されやすくなる時期。栄養バランスを意識した食事をとるようにしましょう。バランスをよくするには主食・副菜・主菜がそろった献立にすること、食材の種類をなるべく多くするのがポイント。またつわりが治まってきて体重増加も気になる時期。適正な増加量をキープするためにも、食物繊維をしっかりとって便秘解消にも心がけましょう。
たんぱく質の必要量が増加する時期。肉、魚介、卵、大豆製品といったさまざまなたんぱく源から積極的にとるようにしましょう。後期になると妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクも高まるので、塩分、糖分、脂肪分のとりすぎに注意。ジャンクフードやお菓子を控え、豆腐や蒸し野菜など低カロリーで栄養が豊富なものを取り入れて。また胃もたれや胸やけが気になるときは食事を小分けにするのがおすすめ。むくみ対策には塩分を控え、体内の余分な塩分を排出するカリウム(生野菜や果物に豊富)をとるとよいでしょう。