妊娠をすると、情緒不安定になったり、突然体調が悪くなったり、本人も戸惑うような変化がたくさん起こります。その変化を夫が知っておくことはとても大切。どんなことが起こるのかわかっていれば、いざというとき冷静にサポートできます。
妊娠期の変化は、具体的に次のようなものがあります。
つねに眠い、昼間に眠くなる
プロゲステロンというホルモンが増え、このプロゲステロンの影響で眠気が増すことがあります。
食欲がなくなった、
食欲がありすぎる
食欲がなくなったり、逆に食欲が増しすぎることもあります。食べたいものや苦手なものなど、食べものの好みが変化する人も。
においに敏感になった
においのきついものが食べられなくなったり、特定のにおいで気分が悪くなったり。ちょっとしたにおいに過敏に反応するようになることがあります。
めまいやふらつき
貧血や自律神経の乱れ、低血圧などでめまいや立ちくらみが起こることがよくあります。長く続くようなら診察をすすめましょう。
なんだか熱っぽい
女性の体温は月経の周期によって低温期と高温期の2つに分かれます。特に妊娠初期はこの高温期が続くため、「熱っぽい」「風邪かな」と感じることがあります。
わけもなくイライラする、
気分が落ち込む
ホルモンバランスが急激に変化するので、精神的に不安定な状態に。感情のコントロールがしにくくなり、イライラしたり、気分が落ち込みやすくなる人もいます。
お腹が張る
妊娠によって子宮が大きくなり、子宮を支えるじん帯が引っ張られることによって、お腹が張ったり、チクチクした痛みを感じることがあります。
便秘がち
妊娠するとホルモンの影響で便秘になることも。便やガスが腸にたまることで腹痛を感じることもあります。
妊娠中は体内に赤ちゃんを受け入れるために免疫力が落ち、感染症にかかりやすくなります。また、ちょっとした病気も重症化しやすくなってしまいます。本人が気をつけるのはもちろんですが、接触の多い夫も敏感になる必要があります。しかも妊娠初期は、妊婦さんにとっては体調が悪くてつらい時期。夫が率先して感染症対策を進めましょう。
予防用のワクチンがある場合は、夫婦そろって接種するのがおすすめ。ただし、妊娠していると打てないワクチンも多いため、その場合は夫がきちんと接種して感染を防ぐことが大切です。
具体的に、妊娠中に気をつけたい病気と対策法は以下の通り。
いずれの病気もまずは、
- 外出後は手洗い
- しっかり休んで疲れをためない
- 人ごみはなるべく避け、
出かける場合はマスクをする
という<基本の予防>をしっかりとしましょう。
風邪・インフルエンザ
ウイルスや細菌が鼻、のど、気管などの呼吸器系器官に侵入し、炎症を起こす病気。特にインフルエンザは感染力が強く、重症化しやすい。
赤ちゃんへの影響
胎児に直接影響を及ぼしたという報告はないので、心配しなくてOK。
予防法
<基本の予防>を徹底し、引いてしまったら症状を長引かせず、重症化させないこと。症状がつらいときは、妊娠中であることを伝えて処方薬をもらう。インフルエンザは予防接種を受け、罹患が疑われる場合は早めに受診。
新型コロナウイルス
発熱やせき、鼻の症状や倦怠感が持続したあと、重症化すると肺炎を合併する病気。
赤ちゃんへの影響
胎児に直接影響が出たという報告は今のところなし。過度に心配しすぎないことが大切。
予防法
<基本の予防>を徹底。罹患の恐れがある場合は、妊娠中は肺炎の発症が早まる恐れがあるので早めに専門機関に相談を。
麻疹(はしか)
麻疹ウイルスが原因で、数日間高熱が出て、全身に赤い発疹が出る。感染力がとても強く、大人がかかると重症化。
胎児への影響
流産や早産を引き起こすことがある。分娩直前にかかると、赤ちゃんにも感染する可能性が。
予防法
妊娠中は予防接種を受けられないので<基本の予防>を徹底。また家族が予防接種を受けて、妊婦さんに感染させないようにする。
風疹(ふうしん)
風疹ウイルスが原因で体全体に赤い発疹が出て、数日で治る。
胎児への影響
妊娠中、特に初期に妊婦がかかると胎児が白内障や心疾患、難聴などの先天性風疹症候群を発症する恐れがある。
予防法
妊婦検診で抗体の有無を調べる。抗体がない、もしくは低い場合、妊娠中は予防接種を受けられないので<基本の予防>を徹底。予防接種を受けていない家族はすぐに受ける。
水痘(水ぼうそう)
水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発熱と赤い発疹が体に広がり、その後水疱になる。
胎児への影響
胎児に目や手足の異常などが起こる先天性水痘症候群を発症する恐れがあるが、確率は1%未満。
予防法
妊娠中は予防接種を受けられないので<基本の予防>を徹底。また家族が予防接種を受けて、妊婦さんに感染させないようにする。
流行性耳下腺炎(おたふく風邪)
ムンプスウイルスが原因で、頭痛・発熱・倦怠感などが起こり、耳の下からあごのあたりがはれる。
胎児への影響
胎児に直接影響が出たという報告はないので、大きな心配はない。
予防法
妊娠中は予防接種を受けられないので<基本の予防>を徹底。また家族が予防接種を受けて、妊婦さんに感染させないようにする。
妊娠したら、すぐにやめたいのが喫煙と飲酒。まず喫煙は以下のようなリスクがあります。
- 流産率が2倍になる
- 早産率が1.5倍になる
- 常位胎盤早期剥離(赤ちゃんより先に胎盤が剥がれて危険な状態に陥ること)のリスクが2~3倍になる
- 出生時の赤ちゃんが低体重になる
- 赤ちゃんの精神発達に悪影響が出る
これは、本人が喫煙していなくても、副流煙でも考えられるリスク。妊娠をきっかけに夫も禁煙するか、少なくとも妊婦さんのいる場所では吸わないようにしてください。
また、妊婦さんが飲酒すると、もともと下がりやすくなっている血圧がさらに下がり、酔いやすく気分が悪くなります。赤ちゃんの精神発達遅滞が起こる確率も高くなり、酔って転倒するリスクも。お酒が好きな方でも、飲まないようにすすめましょう。
早ければ妊娠5週目、つまり妊娠がわかった頃から始まるつわり。ひどい人だと入院や点滴が必要になることもあり、そこまででなくても今までなんでもなかった日常の家事などがつらくなったりします。つらそうにしていたら、積極的に夫が食器洗いやお風呂掃除など、できることをしましょう。できれば何をしてほしいかを直接聞き、その家事を代わってあげるのがベストです。
つわりがきつい時期は、
妊婦さんの食生活が
多少乱れても大丈夫
つわりでつらいときに「おなかの子のためにきちんと食べないと」と言われても、妊婦さんは思うように食事することができません。あまりに食べていなかったり、食べるものが偏っていると妊婦さんの体と赤ちゃんのことが心配になるかもしれませんが、この時期はひとまず水分補給ができていれば大丈夫。無理に栄養バランスを考えず、食べられるものを優先しましょう。
夫の帰りが遅いと、夕食が遅くなってしまうおうちも多いと思います。「食生活が乱れても気にしすぎない」とは言っても、実は妊婦さんが夜遅くにごはんを食べるのはNG。空腹感からつい食べすぎて血糖値が上がりやすくなり、胎児も高血糖にさらされることになるのです。夫が仕事を調整して早く帰宅するか、帰宅が遅い場合は「先に食べておいて」とひとこと伝えるようにしましょう。
妊娠中から産後まで、妊婦さんはわけもなく落ち込んだり、いつもなら気にならないことでイライラしたりと、情緒不安定になります。原因はホルモンバランスの急激な変化や、出産への恐怖、体の変化への戸惑いから来るストレスなど。
こうしたときは、気持ちや愚痴を誰かに聞いてもらうだけでも心が軽くなるので、夫は話したいことを聞いてあげましょう。
なお妊娠中に起こりがちなマタニティブルーとは、具体的にいうと下のような症状。パートナーがこんな状態になっていても驚かず、つらそうにしていたら「どうしたの?」とやさしく声をかけてあげてください。
- ちょっとしたことでイライラしたり、怒る
- わけもなく気分が落ち込む
- とつぜん不安感におそわれる
- 急に泣き出す
- 夜なかなか寝付けない、眠りが浅い
- つねにだるさがあり、すぐに疲れる
- 食欲がない